長年の経済発展を経て、中国の消費者はモノの本質を見抜く目を持ち、より品質の良いもの、高級志向へと確実に変化しています。かつてコーヒーすら飲まなかった中国で、今やスターバックスが地場企業のラッキンコーヒーに店舗数も売上も抜かれている現実は、市場の劇的な変貌を物語っています。実際に、日本の高級日本料理店向けの、デザイン性が高い内装設計デザインへの需要は依然として根強く存在しており、当社の上海事務所への相談も変わらずです。しかし、地政学的なリスクや、債務を膨大に抱えた中央政府による予期せぬ独裁的な圧力は、企業経営を脅かす存在として一層の警戒が必要です。
中国市場の魅力が完全に色褪せたとまでは思いません。私は、経済専門家ではないので精緻なデータで説明することはできませんが、長く現地で仕事を行なってきた肌感において、今後の中国市場については、以下のような方向性が考えられると思います。
「中国+1」戦略の深化:中国を重要な拠点の一つとして維持しつつ、他の地域にも生産拠点や販売拠点を分散する動きが加速。
より高度な技術・製品分野へのシフト:中国市場においては、価格競争から脱却し、高品質・高付加価値な製品やサービスで差別化を図る企業が増加。
中国市場のローカライゼーション:中国市場特有のニーズに合わせた製品開発やマーケティング戦略が、より一層重要性を増す。
地政学リスクへの対応強化:サプライチェーンの可視化、リスク管理体制の強化、代替拠点の確保などが経営の優先課題となっていく。
中国市場を前向きに見た場合には、上記のように考えています。しかし、現在、中国は自らAIIBの債務の罠にはまりつつ、不動産バブルも崩壊したため、国家存亡の危機と言っても良いような状況ですので、自身の過去の苦い経験からも言えることですが、慎重な判断が必要です。
#なぜ今、フィリピンなのか?世界が注目する熱狂の市場
東南アジアの話題に戻ります。私はフィリピン、特にマニラに注目しています。ですので、フィリピン・マニラBGCに当社の拠点準備室を設置しました。これまでの経験からの直感によるところもありますが、決してそれだけではありません。近年、世界経済の舞台でフィリピンの存在感は確実に増しており、特にマニラの市場は成長のエンジンとして、世界中の投資家から熱い視線を集めています。
フィリピンは平均年齢が若く活気に満ちた市場であることはもちろん、高い経済成長のポテンシャル、そして親日的な国民性も、ビジネス展開を強力に後押しする要因です。また、フィリピンはシンガポールに次ぐ英語公用語国であること、特に都市部では多くの人々が流暢な英語を操ることも、大きな魅力の一つです。「味覚」の面でも、日本人と共通する点が多くあるのも、我々日本人が飲食事業、ホスピタリティサービス事業等を展開する上で、有利な特徴です。フィリピンだけではないですが、日本から東南アジアへの飛行時間は片道約5~7時間と欧米に比べて短く、時差が少ない国が多いのも特徴で利点です。
人口ピラミッドの形状による分類は、各国の発展段階と将来性を如実に示しています。
▶︎釣鐘型(高齢化が進んでいる国)
タイ:最頻値が45~49歳で、ASEAN諸国の中で最も高齢化が進展
▶︎富士山型(若年層が多い国)
インドネシア:最頻値が5~9歳
フィリピン:最頻値が5~9歳
ミャンマー:最頻値が10~14歳
ラオス:最頻値が10~14歳
▶︎中間型(若年層と中年層のバランスが取れている国)
マレーシア:最頻値が20~24歳
ベトナム:最頻値が15~19歳
カンボジア:最頻値が20~24歳
▶︎各国の特徴を人口規模で見ると:
シンガポール:高齢化が顕著で、タイに次ぐ高齢化率
インドネシア:2023年時点で約2億7870万人という最大の人口規模
フィリピン:約1億1191万人の人口を抱える第2位の市場
ベトナム:約1億30万人を擁する第3位の人口大国


その他特徴としては、シンガポール、フィリピン、マレーシアは英語力が高い国として知られています。タイ、ラオス、ミャンマーの国境地帯「ゴールデントライアングル」には中国との経済特区があり、中国との関係が強いと言えます。ミャンマーは、軍がクーデターを起こし、実権を握り続けています。
#フィリピンの不動産市場、高級住宅市場の躍進
フィリピンの勢いを最も顕著に示すのが、高級住宅市場の活況です。フォーブスジャパンの分析によれば、フィリピンは世界で最も熱い高級住宅市場であり、その価格上昇率は世界最高を記録しています。
(記事引用)Forbs Japan : Jonathan Burgos | Contributor
この現象は、単なる不動産価格の上昇にとどまらず、国内外の富裕層や投資家が、フィリピンの経済成長と将来性に強い期待を寄せている証左といえるでしょう。高い経済成長率、豊富な若年人口、そして政府による積極的な投資誘致策が相乗効果を生み、マニラは世界有数の投資適地としての地位を確立しつつあります。
2017年に、当時の安倍総理は、フィリピンの国造りに対して今後5年間で官民 を挙げた1兆円規模の支援を行う方針を発表しました。
今回、20年以上に及ぶ海外・中国ビジネスでの経験と現在の市場動向、そして東南アジア・フィリピン市場の持つ可能性から、上海での事業基盤を一定維持しながら、海外拠点を東南アジアの成長市場に移し、その波に乗りたいと考えています。もちろん当社は、日本での活動が中心ですし、今後も日本を基軸として社会に貢献してゆきますが、同時に、この変容の時代において、海外での活動もできる限り活発化させて行きたいとも考えています。海外では脇が甘いといつでも足元をすくわれますから、今では良い教訓となった、以前の上海での苦い経験をふまえつつ。自らの変化を楽しみながら前に進んでゆければと思います。
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