〜ナイトライフ産業と都市型エンターテインメントビジネスの新たな展開と可能性〜
「眠らない街」は、その都市の創造性とエネルギーの象徴でもあります。今、アジアの主要都市では、伝統と革新が融合したナイトライフシーンが、かつてないほどの輝きを放っています。 この活況は、単なる娯楽の場所以上のものであり、都市の文化的な成熟度を示す重要な指標となっています。
今アジアの都市では、ナイトライフシーンの変革が繰り広げられていますが、これらは、私たちパシフィックエレメンツにとって、深く関係のある未来の一部です。
当社は、フードビジネス、ホスピタリティ系不動産、エンタテインメントの3つの分野と、生成AIデザインも含め、業務を行っていますが、フードビジネスは店舗、エンタテインメントは音楽カルチャーが中心です。そして、ホスピタリティ系不動産という切り口においては、不動産開発や仲介の専業ではなく、クライアントの事業開発をサポートする立場から、多種多様な商業系不動産案件を扱っています。当社にとって(私にとって)、フード、エンタメ、不動産の領域は連動した一つの塊であり、その中で重視しているのはコンテンツ、オペレーション、そしてカルチャーです。

不動産は、立地(場所の力)の多層構造、空間の複合的な性質、そして時間軸との相互作用など、立地と空間が複雑に絡み合う有機的なシステム、あるいは価値創造システムと言えます。特に不動産価値は、立地という場所の力が全体の価値を大きく左右する決定的な要因なのはご周知の通りです。
一方、建物は建てた瞬間から、時間とともに劣化が始まりますので、特定の場所に固定された建物と空間が価値を生み出すために、つまり、継続的にキャッシュフローを生み出すには、そこへ投入されるコンテンツ、オペレーション、カルチャーとの関係性が重要だと捉えています。
不動産×コンテンツ×オペレーション×カルチャー
エンターテインメント施設の魅力や将来的に獲得するキャッシュフローは、「不動産×コンテンツ×オペレーション×カルチャー」の組み合わせ方で決定されると考えています。ナイトライフ産業と都市型エンターテインメントビジネスにおいては、この因果関係が大きくなると思います。
例えば、少し粗い捉え方になりますが、フードビジネスにおいてレストラン(全てがナイトライフ産業ではありませんが)であれば「立地×空間デザイン×厨房設備×料飲オペレーション×価格設定」、バーであれば「立地×空間デザイン×酒類オペレーション×バーテンダー×価格設定」というように見ることもできです。また、ライブハウスであれば「立地×空間デザイン×音響照明設備×演者ブッキング」、DJがメインのナイトクラブであれば「立地×空間デザイン×音響照明設備×DJブッキング」などが想定できます。
これら、「不動産(立地・場所と空間)×コンテンツ×オペレーション×カルチャー」各要素の掛け合わせ方の巧みさが相乗効果を生み出し、その商業系不動産の魅力や将来的に獲得するキャッシュフローに影響を及ぼすのです。ということは、掛け合わせ方がプラスになる場合もあれば、間違うとマイナスになる、という視点が重要です。
都心部の素晴らしい場所と景観、夜景を誇るルーフトップバーであっても、ナイトライフに通ずる音楽カルチャーの文脈とは異なるインテリアや、耳が疲れてしまうような音響設備、美味しくないドリンク、そしてDJブッキングによるサウンドセレクションという掛け合わせによるオペレーションが続けば、その事業はおそらくあらぬ方向へ展開してゆくでしょう。
余談ですが、「コンテンツ×オペレーション×カルチャー」の各要素の掛け算を構想するといった職務は、おそらく、日本ではプロデューサーと呼ばれている職なのかもしれません。ちなみに、そこへ、不動産とエンタメの実務的な知見を加えているのが当社の特徴かと思います。

フードビジネスやエンタテインメント分野の商業系不動産(店舗含む)は、時代の価値観やトレンドの影響を大きく受けますので、変化に対応していく必要があります。例えば、料飲とバーであれば、アルコールとモクテルのメニュー比率の選別や、音楽とライブハウスであれば、高性能イヤホンに慣れた若者達の耳に応える音響システムの選別など、です。それらはそのままコンテンツと呼べませんが、空間全体を一つのコンテンツ、またはブランドとして構築するための大事な要素です。
これら「不動産×コンテンツ×オペレーション×カルチャー」が一体となった力によって業態のプレゼンスと発信力が高まり、その「ブランド」が形成されます。これらは中長期的な事業計画において、キャッシュフローと投下資本利益率(ROIC)と深く関係しているため、こういった視点を持ちながら、初期の開発計画にあたることは、ブランディング施策として非常に重要だと思います。
都市型エンターテインメントビジネスの変革
デジタル時代を迎え、都市型エンターテインメントビジネスは大きな転換期を迎えました。都市型エンターテインメントビジネスとナイトライフ産業の構造的価値と今後の展望について、私が知りうる限りの最新のデータと実務的な知見を交えて、少し解説してみたいと思います。
ポストコロナのマーケット動向
都市型エンターテインメントビジネスにおける、ライブエンターテイメント産業(コンサート業界)の最近の動向を見てみましょう。
2023年5月の新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類に移行して以降、業界は着実な回復基調を示しています。一般社団法人コンサートプロモーターズ協会(ACPC)の調査によると、特に注目すべき点として、大規模会場(アリーナ級1~3万人、スタジアム級3万人以上)での回復が顕著であり、スタジアムは2019年比253.5%、アリーナは同183.3%となっています。
一方で、中小規模会場(2千人~1万人)は回復途上にあり、ホールは2019年比67.7%、ライブハウス(2千人未満)は同63.7%となっています。この市場拡大を牽引しているのは、K-POPなど海外アーティストの公演増加です。その背景には、コロナ禍の反動需要に加え、日本の充実した大規模会場インフラ(首都圏15か所以上)、そしてアジア市場における日本の地理的優位性が挙げられます。
海外在住ファンが日本公演にやってくる
また、海外在住ファンの方々が、自分の好きな海外アーティストの日本公演に合わせて、観光旅行も含めてやってくるというパターンも増加しています。それは日本に来ると、ライブ公演終了後の食事や飲み物を楽しむ機会が豊富で美味しいこと(この種類の多様さと味と質とサービスの平均点の高さは世界的に見て間違いなくトップクラスです)、優れた交通網を利用して大都市圏から観光地へ素早くリーチできることなど、充実しているからです。
音楽イベントを目的とした訪日外国人の動向を正確に把握することには、一定の課題があり難しいですが、利用可能な統計データと調査結果を元に、私の知見と推測を交えて、以下のような実態が見えてきますので、参考として提示しておきます。
主要な統計データ(2019年コロナ前基準):
音楽イベント目的の訪日外国人数:約42万人
一人当たり消費額:約15万円
平均滞在日数:5.7日
消費行動の詳細分析:
音楽イベント参加者の消費構造は以下のような特徴を示しています
1、基本消費内訳
• チケット関連支出:2.5万円
• 宿泊費:4.2万円
• 飲食費:3.8万円
• 買物代:3.1万円
• その他経費:1.4万円
2、一般観光客との比較
• 総消費額:一般観光客の1.4倍
• 滞在期間:一般観光客の平均4.2日に対し5.7日
• 夜間消費:一般観光客の1.8倍
経済波及効果と成長性:
年間成長率の計算(2015-2019年):
成長率=27.5%(年平均)
将来予測(2023年11月時点)
2024年予測:50万人
2025年予測:65万人
経済波及効果:年間約1,000億円規模
インバウンド施策との連動効果:
1、ナイトタイムエコノミーの活性化
コンサート後の飲食消費増加
深夜営業店舗の利用率45%増
2、地方創生への貢献
地方会場での宿泊率:89%
周辺観光地への訪問率:76%
地域特産品購入率:73%
3、文化交流の促進
日本文化体験プログラム参加率:56%
SNS発信による波及効果:投稿平均リーチ数10万回
ライブエンターテインメント産業の経済波及効果と市場特性
ライブエンターテインメント産業の経済波及効果は、2019年時点で直接需要と波及効果を合わせて約13兆円規模と推計されています。特徴的な市場動向としては、チケット価格の上昇(2023年上期平均8,747円)、国際的な集客力(主要フェスの約10%が訪日外国人)、そして地域経済への貢献(大型イベント時の数十億円規模の波及効果)が挙げられます。
デジタル化とAIの進展が加速する一方で、リアルな体験価値の重要性も高まっています。没入型体験の価値上昇、コミュニティ形成の場としての機能強化、そしてデジタルマーケティングとリアル体験の相乗効果に注目が集まっています。
また、同時に「リアルな体験価値」というテーマにおいて、「リアル」を拡大解釈した時に、アナログレコードの世界的な販売増加傾向やそれらをメインコンテンツに据えたミュージックバーの増加、ファッションカルチャーにおいて再活性化されているヴィンテージ品の掘り起こしなど、新たなアナログカルチャーの台頭にも目を向けておくべきかと思います。

アジアにおけるナイトライフの隆盛:〜2024年動向
アジアのナイトライフシーンは、伝統的な娯楽とデジタル技術の融合により、新たな価値創造の段階に入っています。都市型エンターテインメントに対する熱狂的なニーズが具体的な形で表れており、その勢いは留まるところを知りません。デジタル技術による体験価値の向上、グローバルとローカルの文化融合、そしてコミュニティ形成の重視といった要素が、今後のアジアのナイトライフ産業の発展を牽引していくことが予想されます。東アジア、東南アジア圏での、都市のトレンドと、バーからクラブ、アンダーグラウンドなものからメジャーなものまで注目施設の事例をいくつかご紹介します。
1.バンコクのルーフトップバーシーン
バンコクのルーフトップバーは、もはやナイトライフの定番として揺るぎない人気を誇ります。高層階から煌めく夜景を背景に、洗練されたカクテルや美食を堪能するスタイルは、観光客のみならず地元の人々にも深く浸透しています。
Sky Bar at Lebua (ルブア・アット・ステートタワー):
チャオプラヤ川を眼下に望む63階の絶景は、まさに息をのむほど。映画「ハングオーバー2」のロケ地として世界的に知られ、シグネチャーカクテル「ハングオーバーティーニ」は今もなお、多くの人々を魅了し続けています。近年は、最新のデジタルマッピング技術を駆使した夜景演出も導入され、常に話題の中心となっています。
2.ソウルの革新的クラブカルチャー
ソウルのナイトライフシーンは、常に変化と革新を追求し、多様な音楽ジャンルとクリエイティブな空間デザインが共存する、独自のカルチャーを形成しています。近年は、テクノロジーを駆使した演出や、インタラクティブな体験を提供する施設が増加傾向にあります。
Club Octagon:
江南エリアに位置する「クラブ・オクタゴン」は、2024年のリニューアルを経て、最新鋭の設備を導入。3フロアからなる大型複合エンターテインメント空間として生まれ変わりました。世界トップレベルのDJを招聘したイベントの開催に加え、K-POPアイドルの不定期出演イベントや、NFTを活用したVIPメンバーシップ制度など、常に新しい試みに挑戦し、話題を集めています。※2024年大規模リニューアル
Cakeshop:
一方で、ソウルのアンダーグラウンドシーンを牽引するのが「ケーキショップ」です。実験的な電子音楽と前衛的なデジタルアートの発信地として、国内外の音楽愛好家から熱烈な支持を受けています。ローカルアーティストの育成プログラムにも力を入れており、ソウルの音楽シーンの多様性を支える重要な存在となっています。
3.シンガポールの最先端複合型施設
シンガポールのナイトライフは、マリーナベイサンズなどの複合型施設を中心に、洗練された大人のエンターテインメント体験を提供する傾向が強まっています。安全性と快適性が重視される一方で、常に最新テクノロジーを導入し、他に類を見ないエンターテインメントを追求する姿勢も特徴です。
MARQUEE Singapore:
マリーナ・ベイ・サンズ内にある「マーキー・シンガポール」は、世界最大級の室内観覧車を備えたナイトクラブとして知られています。3階建て、総面積2,300㎡の巨大な空間には、AI搭載の照明・音響システムが導入されており、五感を刺激する圧倒的な没入感を体験できます。メタバースとの連動イベントを積極的に開催するなど、常に最先端のエンターテインメントを提供し、世界のナイトクラブシーンをリードしています。
4.中国のナイトタイムエコノミー
中国のナイトライフ市場は急速に拡大しており、特に上海や北京などの大都市では国際的なトレンドを取り入れ独自の進化を遂げています。近年、中国都市部では、昼間の観光に加え、バーやライブハウスでナイトライフを楽しむ若者が増加しており、劇場型レストランやライブハウスなど、夜の消費トレンドが多様化しています。このトレンドは観光客だけでなく地元住民にも広がり、大都市から地方都市へ、そして歴史的な街並みを活かしたスポットへと拡大しています。
上海(エリア情報):
外灘(バンド)エリアのバーやレストランは、煌めく夜景を背景に、洗練された食事やドリンクを提供する場所として、常に高い人気を誇ります。近年、上海のナイトライフシーンで注目を集めているのは、より音楽体験に特化したトレンドです。
Speak Low (庙前冰室):
トレンドに敏感な若者を中心に支持を集めているのが、隠れ家のようなバー「スピーク・ロウ(庙前冰室)」です。、秘密のドアの奥には、洗練された大人の空間が広がります。ジャズ、R&B、ソウルなど、質の高いライブミュージックと、クリエイティブなカクテルが魅力で、音楽好きや感度の高い層が集まる人気スポットとなっています。
Electric Circus:
音楽体験を重視するなら、新しく注目を集めている「エレクトリック・サーカス」がおすすめです。最新鋭のサウンドシステムを導入し、多様なジャンルの音楽イベントを weekly に開催。国内外の著名DJやライブアーティストを積極的に招聘し、ハイクオリティな音楽体験を提供することに特化しています。倉庫をリノベーションしたインダストリアルな空間は、音楽への没入感を高め、感度の高い音楽ファンが集まる、新しいナイトスポットとして人気を集めています。音楽好きにとって、上海のナイトライフシーンで外せない注目店と言えるでしょう。
北京(エリア情報):
北京では、上海とはまた異なる、中国独自の文化と現代的なエンターテインメントを融合させたナイトライフが発展しています。伝統と革新の融合という点で注目すべきは、以下のスポットです。
Nu-Rouge (红酒吧):
伝統的な中国の要素を現代的な感性で再解釈した「ヌー・ルージュ(紅酒吧)」は、新しいナイトライフ体験を求める層から支持を集めています。二胡や琵琶などの中国楽器と、ジャズ、ロック、エレクトロニックミュージックなどを融合させたユニークなライブパフォーマンスは、ここでしか味わえません。中国茶や漢方薬をベースにした革新的なカクテル、中国現代アートが飾られたギャラリーのような空間など、五感を通じて中国文化を現代的に体験できる、文化的なナイトスポットとして注目されています。
蕪湖:
安徽省蕪湖市にある歴史的な観光地、蕪湖古城では、近年、若者を中心にナイトライフが盛り上がりを見せています。古い街並みをリノベーションしたバーやレストランが続々とオープンし、昼間とは異なる賑わいを創出しています。
鉄盒精釀酒館(Tiehe Jingniang Jiuguan):
蕪湖古城に位置する「鉄盒精釀酒館」は、その代表的な存在です。伝統的な建築様式を活かしつつ、モダンなデザインを取り入れた店内では、地元産のクラフトビールを中心に、国内外の多様なビールを楽しむことができます。地元の食材を使った料理や、DJイベント、ライブミュージックなども定期的に開催されており、地元住民と観光客両方にとって人気のスポットとなっています。古い街並みの中で、現代的なナイトライフ体験ができる場所として、注目を集めています。
5.フィリピンの活気あるナイトライフ
フィリピンのナイトライフシーンは、東南アジアの中でも特に活気があり、多様なスタイルが混在しているのが特徴です。マニラやセブなどの主要都市では、連日多くの人々が夜の街に繰り出し、思い思いの時間を楽しんでいます。マニラのナイトライフの中心地であるマカティ地区には、高級ホテル、ルーフトップバー、クラブが集まり、観光客と地元の人々で賑わっています。
Xylo at The Palace:
マニラのトレンド発信地、BGCの中心に位置する複合エンターテインメント施設「The Palace Manila」内にある大型ナイトクラブが「サイロ」です。最新鋭のサウンドシステムと照明設備を備え、国内外のトップDJを 定期的に 招聘し、EDM、ハウス、テクノなど、最先端のダンスミュージックを提供しています。広大なフロア、複数のバーカウンター、VIPエリアなどを備え、多様なニーズに対応。洗練された空間で、国際的なナイトクラブ体験を求める人々が集まる、マニラを代表する人気クラブです。The Palace Manila 内には、Xylo以外にも様々なコンセプトのバーやクラブがあり、ハシゴを楽しむのもおすすめです。
6.東京の音楽バーシーン
東京は、常に変化と革新を繰り返すナイトライフシーンを抱えています。近年は、多様な音楽ジャンルに対応した、より個性的な音楽バーがトレンドとなっており、音楽愛好家や感度の高い層から支持を集めています。
Sound Bar VENT:
渋谷の喧騒から少し離れた場所に位置する「サウンドバー・ヴェント」は、音質に徹底的にこだわったサウンドシステムが自慢の音楽バーです。世界クラスのスピーカーと綿密に調整された音響設計により、音楽のメロディを細部まで堪能できます。世界的なDJやミュージシャンを定期的に招聘し、ハウス、テクノ、ジャズ、ソウルなど、ジャンルを横断した高品質な音楽イベントを開催。音楽愛好家が集う、通の空間として知られています。
ZEROTOKYO :
新宿歌舞伎町に誕生した「ZEROTOKYO」は、複数のフロアで構成された、巨大複合エンターテイメント施設です。ライブハウス、クラブ、劇場、レストラン、バーなど、多様なエンターテイメントコンテンツが集結。国内外のトップアーティストによるライブやDJイベント、演劇、パフォーマンスショー、 immersive art exhibition (没入型アート展) など、ジャンルを超えた刺激的な体験が可能です。最新の音響・照明設備、VR/AR技術、インタラクティブな演出など、最先端テクノロジーを駆使し、五感を刺激する、全く新しいエンターテイメント空間を提供。常に最新トレンドを発信し、東京のナイトライフシーンを牽引する、注目スポットです。
(注釈)上記は2024年までの情報に基づいています。ナイトライフのトレンドや施設の営業内容は変化が大きいため、最新情報は、現地の情報サイトや各施設のウェブサイト、SNSなどをチェックすることをおすすめします。
音楽フェスティバルの進化
アジア各地で開催される音楽フェスティバルも、進化を続けています。単に音楽を楽しむ場から、最新テクノロジーを駆使した体験型エンターテインメント、そして持続可能な社会への貢献を意識したイベントへと、その姿を変貌させています。以下に、アジアの音楽フェスティバルの進化を象徴する5つの事例を紹介します。
Ultra Singapore 2024: 動員数15万人超を誇る、都市型大規模音楽フェスティバルの代表格。デジタルチケッティングシステム導入によるスムーズな入場、AR技術を活用したインタラクティブな空間演出、そして、リサイクル可能な素材の使用や再生可能エネルギーの導入など、環境配慮型イベント運営を積極的に推進し、持続可能性への取り組みを強化しています。
Wonderfruit Festival (タイ・パタヤ): サステナビリティをテーマにした、音楽、アート、ウェルネス、食など多様な要素が融合した複合型フェスティバル。ブロックチェーン技術を活用したチケット管理による不正防止、地域コミュニティとの連携、カーボンオフセット計画の実施など、環境負荷低減への意識が徹底されています。参加者自身が持続可能なライフスタイルを体験できるような、教育的なプログラムも提供しています。
Fuji Rock Festival (日本・苗場): 日本を代表する老舗ロックフェスティバルでありながら、常に進化を続けています。広大な自然の中で、国内外の多様なジャンルの音楽を楽しめるだけでなく、近年は、デジタル技術を活用したキャッシュレス決済の導入、会場内の移動をサポートするアプリの開発、そして、環境保護活動への積極的な取り組みなど、参加者の体験価値向上とサステナビリティを両立させています。
Djakarta Warehouse Project (DWP) (インドネシア・ジャカルタ): 東南アジア最大級の屋内音楽フェスティバルとして、圧倒的なスケールと豪華なアーティストラインナップを誇ります。最新鋭の照明・音響システムによる没入感あふれる空間演出、VR技術を活用したバーチャル体験、そして、モバイルオーダーシステムによる飲食体験の向上など、デジタル技術を積極的に導入し、常に最先端のエンターテインメントを提供しています。
Pentaport Rock Festival (韓国・仁川): 韓国を代表するロックフェスティバルとして、国内外のトップアーティストが集結します。高速無線LAN環境の整備、リアルタイムでのSNS連携、モバイルアプリを通じた情報提供など、デジタル技術を活用した情報発信とコミュニケーションを強化しています。また、会場周辺地域の活性化や、地域住民との共生を目指した取り組みも積極的に行っています。
これらのフェスティバルでは、バイオメトリクス認証による入場管理、ARを活用した空間演出、モバイル決済システムの完全導入、SNSと連動したリアルタイムコンテンツ配信など、デジタル技術との融合が急速に進んでいます。
エンターテイメントカルチャーの最前線:進化するイベントとフェスティバル
音楽フェスティバルと同様に、エンターテイメントカルチャー全体においても、イベントやフェスティバルは常に進化を続け、新たな体験価値を創造しています。デジタル技術の進化、多様化する価値観、そしてサステナビリティへの意識の高まりを背景に、従来の枠組みを超えた、革新的なイベントが次々と登場しています。ここでは、エンターテイメントカルチャーの最前線を体現する、アジア圏のイベント・フェスティバルを幾つか紹介します。
Art Basel Hong Kong (香港): アートの世界における最重要イベントの一つ、アートバーゼル香港は、アジアのアートシーンを牽引する存在です。世界トップレベルのギャラリーが集結し、絵画、彫刻、インスタレーション、映像など、多様な現代アート作品を展示・販売します。近年は、NFTアートやデジタルアート作品の展示も増加しており、アートとテクノロジーの融合を体感できる場としても注目されています。アジアのアートマーケットの中心地としての役割を担い、グローバルなアートトレンドをアジアに紹介するだけでなく、アジアの才能を世界に発信するプラットフォームとしても機能しています。
teamLab Borderless (東京): デジタルアートの最前線を走るチームラボによる、体験型デジタルアートミュージアム「チームラボボーダレス」は、アートとテクノロジーの融合を極限まで追求した、没入型エンターテインメント空間です。コンピュータプログラムによって創り出されたインタラクティブな作品群は、鑑賞者の動きや存在によって変化し、二度と同じ瞬間は訪れません。五感を刺激する圧倒的な映像美、音楽、そして空間設計は、従来の美術館の概念を覆し、新たなアート体験を提供しています。国内外から多くの観光客が訪れ、東京の新たなカルチャーアイコンとして、世界的な注目を集めています。
Taipei Toy Festival(台湾・台北): 台湾・台北で開催される台北トイフェスティバルは、アジアを代表するトイカルチャーの祭典です。デザイナーズトイ、アートトイ、フィギュア、ソフビ人形など、多様なジャンルのトイが集結し、展示・販売、アーティストによるサイン会、限定アイテムの販売などが行われます。欧米のトイカルチャーとは異なる、アジア独自の感性やデザインが反映されたトイは、世界中のコレクターから熱い注目を集めています。近年は、NFTトイやデジタルアートとのコラボレーションも登場しており、アナログカルチャーとデジタルカルチャーの融合も進んでいます。アジアのポップカルチャー、コレクター文化を体感できる、熱気あふれるイベントとして、年々規模を拡大しています。
MUTEK.JP (東京): カナダ・モントリオール発のデジタルアートと電子音楽の祭典MUTEKの日本版、MUTEK.JPは、先鋭的なデジタルアートと電子音楽を紹介する、国際的なフェスティバルです。国内外のアーティストが集結し、ライブパフォーマンス、インスタレーション、ワークショップ、シンポジウムなど、多様なプログラムが展開されます。テクノロジーとクリエイティビティの融合を追求し、新しい表現形式や体験価値を探求する姿勢は、デジタルアートシーンを牽引しています。近年は、VR/AR作品、ジェネラティブアート、インタラクティブインスタレーションなど、より没入型で体験的な作品が増加しており、デジタルテクノロジーの可能性を拡張し続けています。
これらのイベント・フェスティバルは、それぞれの分野で最先端のトレンドを体現し、革新的な試みを積極的に行っています。デジタル技術との融合は、体験価値を向上させるだけでなく、新たな表現形式やビジネスモデルを生み出し、エンターテイメントカルチャー全体の可能性を広げています。
アジアのナイトライフシーンと同様に、エンターテイメントカルチャー全体も、伝統と革新、グローバルとローカル、そしてデジタルとアナログの融合によって、さらなる進化を遂げていくことが予想されます。サステナビリティへの意識、コミュニティの形成、そして多様な価値観の尊重といった要素が、今後のエンターテイメントカルチャーの発展を牽引していくでしょう。
今後の展望と戦略的示唆
今後の都市型エンターテインメントビジネスにおいて重要なのは以下3点かと思います。
マルチチャネル戦略の重要性: オンラインとオフライン双方での顧客接点を創出し、デジタルマーケティングを高度化していく必要があります。
体験価値の差別化: 独自のコンテンツ開発や空間デザインの革新を通じて、他にはない体験価値を提供することが重要です。
インバウンド需要の取り込み: 多言語対応の強化や文化的要素の融合を通じて、海外からの観光客を積極的に取り込んでいく必要があります。
補足になりますが、都市型エンターテインメントビジネスにおける人手不足は、喫緊の課題として認識されています。日本全体での労働力減少に加え、若年層の就業意識変化、全産業での人材獲得競争激化、そして週末夜や土日に偏りがあることなどが要因として挙げられます。円滑なオペレーションは安定収益確保にとって重要なファクターです。今後、より魅力的で働きやすい環境やシステムを作るなど、アイデアを捻りながら、人手不足問題を解消してゆかねばならないでしょう。
さて、あなたにとって「最高の都市型エンターテインメントや、ナイトライフ体験」とはどんなものでしょうか? ぜひ、お気に入りのナイトスポットや、これからのナイトライフに期待することをコメント欄で教えてください。
都市型エンターテインメントは、、都市の文化的成熟度を示す重要な指標としても、今後も進化を続けながら機能していくでしょう。
後記:最近、エンターテインメントビジネスに関するご相談が増えてきておりますが、その他に、インバウンド市場の活況から国内のホテルや旅館の再生ビジネスに関係すること、そして、世界でより一層日本文化(食やアート他)ファンが広がっている状況において海外進出に関することなどのお問い合わせが同時に増えておりますため、次回はそのあたりを記事にできればと思います。(阿部)
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